タシルンポ寺はチベットのシガツェ地区最大の寺院で、シガツェ市（日喀則）の西部、尼色日山の山腹に位置する。ここは4世以降のパンチェン・ラマが宗教活動と政治活動を主に行った場所として知られ、ラサの3大寺院であるガンデン寺、セラ寺、デプン寺と合わせてゲルク派四大寺院と呼ばれる、特に有名なチベット仏教寺院のひとつである。

タシルンポ寺（扎什倫布寺）は西蔵南部日喀則（シガツェ）市に位置する。タシルンポ寺はチベットのシガツェ地区最大の寺院で、シガツェ市の西部、尼色日山の山腹に位置し、西暦1447年（明正統12年）に創建された。

タシルンポとは、チベット語で「吉祥の須弥山」を意味する。須弥山とは、古代インドの宇宙観で、世界の中央にあるとされた高山のこと。タシルンポ寺は1447年、ゲルク派の開祖であるツォンカパ大師の直弟子であった、のちに初代ダライ・ラマとなるゲンドゥン・ドゥプパによって12年をかけて建立されました。当時釈迦牟尼像を祀るために建てられた大経殿(錯欽大殿)は今もこの寺の核心として現存。建立当初のタシルンポ寺はそれほど大きな寺院ではなっかたが、建立からおよそ150年後の1600年に、4世パンチェン・ラマの手により大規模に拡張され、以降幾度もの拡張を繰り返し、現在の大寺院の姿となった。

タシルンポ寺の山門をくぐると、勇壮かつ偉大な建築群が目前に迫る。白い建物の奥にそびえ立つ褐色の建築は歴代パンチェン・ラマの霊塔である。前方右手の斜面には白い壁がそびえ立ち、祝日になると巨大なタンカ（チベット仏画）がここに展示される。寺院の周囲はすべて壁に囲まれ、境内は大きさの異なる複数の庭園で構成されており、赤壁と金色の装飾を持つ雄大な建物が、荘厳で神秘的な寺院を象徴している。

大経殿(錯欽大殿)は、タシルンポ寺建立当時の建物である。ここはパンチェン・ラマが経を講じたり、僧侶達が仏教について論じたりする場所となっている。寺院の西側にある大弥勒殿(強巴仏殿)は最も大きく目を引く建物で、中には世界最大の弥勒菩薩坐像が安置されている。弥勒像の高さは26.2メートルもあり、像の鼻孔に人が入れるほど巨大である。また、タシルンポ寺に最も有名な建物は歴代パンチェンの霊塔で、元々は８棟あったが、現在は一部が合祀されるなどで４棟が現存する。

タシルンポ寺はきわめて文化歴史的価値の高い仏像や、仏塔やタンカがあり、手書きの「貝葉経（ばいようきょう）」（貝葉経：ヤシの葉に書かれた経典）は金粉で書かれた「甘珠爾(カンギュル)」、丹珠爾(テンギュル)も収蔵している。そのほかにも明清時代の様々な陶磁器、琺瑯器（七宝焼）、硝子器なども所蔵されている。タシルンポ寺の壁画は色鮮やかで、細部まで活き活きと描かれた、仏教芸術の傑作とも言える。