重慶(じゅうけい)は、古来水上交通の要衝として栄えてきた。約3000年前の周の時代、「巴国」の都が置かれたが、その後「巴郡」として秦の管轄下となっていた。南北朝時代、「巴郡」は「楚州」となり、隋に至って「楚州」は、嘉陵江の古称「渝水」にちなんで「渝州」となった。この「渝」が重慶の略称として現在も使われている。
「重慶市」となったのは中華民国時代の1929年のことです。1937年から1946年までは、国民政府の「戦時首都」となり、当時の中国における政治、経済、文化の中心で、国民政府が南京に戻った後も直轄市とされた。1949年10月の新中国成立後も西南地域の要衝として中央直轄市となり、1954年には四川省に編入された。その後、1997年に再び中国で4番目の中央直轄市となった。
重慶市は従来の基幹産業である自動車・オートバイ産業、装備製造業の他、ITを中心としたハイテク産業および化学工業などの新たな産業の発展に力を入れている。
電子情報産業は、2009年後半より米の「ヒューレット・パッカード」、台湾系の「フォックスコン」等が相次いで進出を決定し、関連企業とともに、主に「西永微電子産業園区」(重慶市内のIT産業園区)で生産を行っている。2018年、重慶市は世界全体の約25%にあたる5730.23万台のノートパソコンを生産しており、世界最大の生産拠点となっている。
自動車産業では,重慶は中国有数の自動車生産拠点として,長安汽車との合弁で「フォード」や2017年に工場ができた「ヒュンダイ自動車」などが乗用車の生産、慶鈴汽車との合弁で「いすゞ」が商用車の生産を行っており、2018年の自動車生産台数は約205万台。
現在は、電子部品(集積回路)、液晶パネル、ロボット・スマート産業用機器、新エネルギー自動車・スマート自動車、シェールガスなどの産業の振興を計画しており、単一的な産業構造から多角的な産業構造への転換を図っている。特に、重慶市を含む西南地域はシェールガスの埋蔵量が多いことで知られている。重慶市の涪陵鉱区は中国の国家級鉱区に指定されており、2018年には中国国内初のシェールガス工場が完成した。
2011年に重慶から新疆を経由しドイツに至る貨物鉄道・渝新欧鉄道の運行が開始され、2019年の運行便数は1500便を超え、ノートパソコンや自動車、日用品や工芸品など幅広い品物が運ばれている。その後は、重慶から貴州、広西チワン自治区を通じシンガポールまでをつなぐ、物流ルート(陸海新ルート)も開通し、「一帯一路」構想における主要な物流拠点の一つとして成長して行く。